瀧本哲史『戦略がすべて』(2015)

戦略がすべて (新潮新書)

戦略がすべて (新潮新書)

評判が良いようだったので読んでみた。内容としてはあまり求めていたものではなかった。

著者によるこの本の位置づけは、以下の一文が表していると思う。

本書は時事評論の形を借りた「戦略的思考」を磨くためのケースブックである。 p244

そしてこの本でいう戦略は以下の通り。

戦略を考えるというのは、今までの競争をまったく違う視点で評価し、各人の強み・弱みを分析して、他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をすることなのだ。 p245

これは間違っていないとは思うのだけれど、本の内容そのものは、ずいぶんふわっとしていてあまり戦略っぽくない印象を受けた。

それぞれのケーススタディにイマイチ目的というか、一本通った筋のようなものを感じられなかった*1。なんというか、おもしろいエッセイの域を出ていないというか。

基本のないままにケーススタディを繰り返しても、それはただがむしゃらに頑張っているだけのように思う。以前読書メモを書いた世界を変えたいなら一度武器を捨ててしまおう。 - mk_55's diaryのように、戦略とは何かを定義してから、この本に書いてある各論を定義に沿って進めたほうが面白かったと思う。

*1:個々の論には納得できるものも多いけれど。