分かりやすい資料を作るために読む本:高橋佑磨・片山なつ『伝わるデザインの基本』

誰でもそうだとは思うが、私も学校や職場でいろいろな資料を読んだり、作ったりしてきた。

分かりやすい資料は、スっと頭に入ってくる。それに対して、同じような内容が書いてあっても、ひどい資料はどこまでもひどく、正確に読み解くのに非常に労力を割かざるを得なかった経験もある。

ひどい資料を作りたくない、分かりやすい資料を作りたい、と思ったとき、改善する点は構成、文章など色々と考えられるが、最大の問題はデザインだと思う。パッと情報が頭に入ってくるデザインでなければ、詳細な内容の検討に至るまでに時間を要してしまうからだ*1

こういった資料のデザインに関するガイドは世の中に多々ある。昔から『ノンデザイナーズ・デザインブック』といった名著もあるが、今なら 『伝わるデザインの基本 増補改訂版 よい資料を作るためのレイアウトのルール』が最も良い本だと思う*2

この本は、以前ホットエントリになった伝わるデザイン|研究発表のユニバーサルデザインを基に作られており、デザインの基本を丁寧に教えてくれる。 この本の最もよいところは、デザインを構成する要素一つ一つを分解してルール説明した上でよい例と悪い例を挙げてくれるため、体系的に分かりやすい資料の作り方を学ぶことができることだ。

デザインを構成する要素

資料のデザインを構成する要素を網羅的にもれなく解説してくれており、困ったときにひとまずこの本を開けば、何らかの改善策が見つかるのでとても重宝する。以下は目次から抜粋。

  • 第1章 書体と文字の法則
  • 第2章 文章と箇条書きの法則
  • 第3章 図形と図表の法則
  • 第4章 レイアウトと配色の法則
  • 第5章 実践

伝わるデザインの基本 よい資料を作るためのレイアウトのルール:書籍案内|技術評論社より

ルール

上記であげてくれた要素に対して、「どうすればよいのか」だけではなく「なぜこうしなければならないのか」を一つ一つ丁寧に説明してくれるので、とても理解しやすい*3

良い例と悪い例

上の2点を抑えたうえで、これでもかというほどに良い例と悪い例が具体的に示されるので、わかった気になっただけでなく、自分の資料を作るときにも参考にできる。また、他人の作った資料のレビューをする機会があるなら、そういったときにもこの本を示しながら説明すれば効果があるだろう。

少なくとも私は、この本を読んで、デザインの構成要素ごとのルールを理解したことで、資料のデザインで「何が悪いのかわからない」ということはなくなった*4

関連情報

この本の中で簡単に触れられている「図解」をより詳しく知りたいのであれば、「[カラー改訂版]頭がよくなる「図解思考」の技術」という本もあり、より詳細に図解の効果や型を学ぶことができる。

また、プレゼンテーションをどうやって構成するか、という点では「プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術」を読むと、図解を使ってプレゼンテーションのシナリオを構成し、どうすればスライドに落としていけるか学ぶことができる。

加えて、色覚バリアフリー(端的に言えば色弱*5の方に配慮すること)を考慮した色使いについては東京大学カラーユニバーサルデザイン推奨配色セットが参考になるだろう。
   


(補足)デザインに関するその他の本

デザインに関連してこれまで読んだ他の本についても比較のため簡単に記載する。

(1) ノンデザイナーズ・デザインブック

私が読んだことがあるのは初版。現在は新装増補版(実質第5版)も出ている非常に有名な本。新装増補版ではスライドやWEBデザインについても記載があるようだ。ただこの本は翻訳書であるため、例がほぼ英語を使ったデザインであることや、文章が翻訳調ですんなりと頭に入ってこない、という欠点があるため、誰にでもおすすめできる本ではもうないと思う。

(2) 学生・研究者のための 使える!PowerPointスライドデザイン 伝わるプレゼン1つの原理と3つの技術

大学生の時に読んだ。スライドデザインの改善例が豊富なので、学生には役に立つと思う。だた、扱っている範囲がスライドのみと限定的で、実例重視で体形的にまとまっていない印象があり、役に立つ人には役に立つ本という印象。

*1:そもそも資料に記載すべき内容がある前提ではある

*2:私が読んだのは初版だが、今は増補改訂版が出ている

*3:ある程度、説明に納得感をもって読み進めることができる

*4:品質を上げるために細部にこだわるようになったので、それはそれで時間はかかるし、改善のために内容に手を入れることになるのでまた別のところで悩むのだけれど

*5:色弱については、NPO法人 カラーユニバーサルデザイン機構の色覚・呼称が詳しい